消費者にとっての「飲用水」は経済面よりも健康面が重視される時代になりました。井戸水から水道水、水道水からミネラルウォーター、ミネラルウォーターからウォーターサーバーへと、より安全で健康的な供給へと移り変わっています。
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その一方で、生活に井戸水を使われているご家庭、家の新築などで井戸水の活用をお考えのご家庭など、現在にあっても井戸水はまだまだ多くの需要があります。
特に最近では、防災意識の高まりと共に飲用水としての重要性が再認識されつつあるなど、井戸水が見直される気運が高まってきています。ここでは、意外と知られていない井戸水のことについて、ご紹介していきます。多くの方のご参考になれば幸いです。
【目次】
井戸水の水質検査は法律で決まっているの?
井戸水の水質検査は法律で決まっているの?
各ご家庭からいただくお問い合わせの中で最も多い質問が「井戸水の水質検査をしないと、役所や保健所に怒られるのか?」という内容です。
結論から申し上げると、一般のご家庭で利用されている井戸水の水質検査は、法律で義務付けられておりません。従いまして、各自治体から罰則が課されること等はありませんので、まずはご安心ください。
公的な施設等で「定期的な井戸水の水質検査をしましょう!」といったポスターを目にする機会が多いため、そのようなイメージが定着しているのだと思います。
ちょっと待って、それは注意喚起です
しかし、決して「法律で義務付けられていないのだから、水質は気にしない」とは言わないでください。逆に言えば、水道水が「水道法」という法律によって一定の水質レベルが確保されているのに対し、水道水以外の水(特にご家庭の井戸水等)には何も保証がないのですから。
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井戸水の水質検査について、多くの方が気にされているということは、それだけ人目につく場所でみなさんに注意喚起されているということなのです。
井戸水の飲用は自己責任が基本
法的に規制を受けない井戸水は、自己責任で井戸を管理して、飲用することが基本になります。ご家庭で井戸水を飲用される場合には、健康を害さないためにも、水質に対して高い意識レベルが必要です。
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井戸水はきれいで美味しいという考え方は、もはや過去のもの。有害物質等による地下水汚染の拡大や井戸の不適切な管理によって、井戸の衛生確保に支障が出てきているのが現実です。
そもそも井戸水ってどこから来た水?
井戸水の元となる水は、地下水。つまり、雨水です。降ってきた雨が地面に浸み込んでいき、それが地下水となって溜まっている所からポンプ等で汲み上げています(多くはありませんが、自然に湧き出てくる自噴井戸という井戸も存在します)。
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地面に浸み込んだ地下水には、その後に岩質由来の様々な物質が溶け込んでいき、水質が構成されていきます。国内でも、各地で水質が違っているのはこのためです。
飲用に適した井戸水は?
井戸には「浅井戸」と「深井戸」があります。少し難しい話になるので、ここでは詳細に説明しませんが、井戸は深さによって区別されている訳ではありません。
浅井戸水
「不圧帯水層」と呼ばれる水層から汲み上げる地下水のことで、地震などの影響で水質が変化しやすく、飲用には適さないと言われています。古くから生活用水に利用され、最近では洗車や散水に利用されているご家庭が殆どです。
深井戸水
「被圧帯水層」から汲み上げられた水のことで、自然にろ過された天然水です。不純物の影響を受けにくいので、浅井戸よりも安全な水として知られています。通常、この深井戸水が飲用として用いられています。
飲用井戸等衛生対策要領とは
井戸水を安全かつ衛生的に引用するため、昭和62年4月1日、厚生労働省が「飲用井戸等衛生対策要領」というものを定めました。以下にリンクを貼っていますので、興味のある方は確認してください。4ページのPDFファイルです(以下で簡単に説明しますので見なくても理解可能です)。
要約すると、この要領は「衛生対策の充実を図ることを目的に策定されている」もので、以下の3つを守ることによって、飲用井戸等の衛生確保をしてくださいというものです。
✔ 水道以外の水の適正管理
✔ 定期的な水質検査
✔ 汚染された時の措置と防止対策
この要領に沿って、各都道府県等から管下市町村へと広がり、みなさんに注意を呼び掛けています。そう、みなさんが公的な施設等で見かける「定期的に井戸水の水質検査をしましょう」というあのポスターです。これが上の2番目にある「定期的な水質検査」です。
飲用井戸はしっかり衛生対策を
井戸水が飲めるかどうか確認したいというお問い合わせも多くあります。ただし、この質問は非常に難しい質問です。
ここまでに説明したように、井戸水は自然界由来のものなので、100%大丈夫とは言い切れません。これは昔からご自宅の井戸水を飲用されているご家庭であっても同じ条件です。地震等で井戸水の水源が変わることも想定されるからです。
しかし、飲用井戸等衛生対策要領に基づく井戸の衛生対策で、一定水準で水質管理が可能です。井戸水に対する認識を高め、しっかりとした対策を講じるべきです。
ただし、各地域によって独特の水質になっていたり、水質に対する条例が違っていたりするため、先ずはご家庭のお住いのある自治体の情報を確認してください。
どうやって情報を確認するの?
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広島県の場合
お問い合わせの例として、ここでは富士企業株式会社の本社がある広島県を挙げてみます。
広島県にお住いのあるご家庭であれば、「広島県 井戸水」等で、Web検索を行うと広島県のホームページ「井戸水などを飲用している皆様へ」が見つかります(令和2年12月現在)。ページを開いてみると、かなり具体的な内容まで記載されています。
特に重要なのは、各自治体のお問い合わせ先です。広島県では、水質に異常が判明した時などの相談窓口を各自治体毎に取りまとめられています。また、広島県独特の水質についても下記のように記載されています。
広島県内では過去に,地質由来と考えられる「ヒ素・フッ素・鉄・マンガンなど」が水質基準値を超えて検出される事例が散見されています(上記、リンクページより引用)。
このように自治体から得られる情報を参考に、井戸の管理方法や水質検査項目を最適化していくことで、井戸を衛生管理に繋げることができます。
広島県以外の場合
広島県以外にお住まいの方でも、調べ方は同様です。ただし、市・町・村単位から検索すると、何も引っかからないことがあるので、ご注意ください。
先ずは都道府県レベルで検索してみて、その後、各市・町・村を確認するようにするとスムーズに確認できると思います。各地の岩質や条例により、各ご家庭で注意しなければならない情報が得られるはずです。
さいごに
以上、井戸水のおはなしでした。このページをご覧いただいている方は、井戸水に対する意識レベルの高い方だと思います。皆様により有益な情報を発信していきたいと思いますので、今後もご覧いただけると幸いです。
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